(平成30年(2018年))

◎過去の「私の主張」は、左のメニューから御覧ください。
◇自民党憲法改正素案の解説(3月29日)
◇佐川前理財局長へ告げる(3月23日)

◇公文書の書き換え問題について(3月14日)
◇日本の勲章制度(1月11日)

自民党憲法改正素案の解説(3月29日)

 自民党憲法改正推進本部は、去る3月25日に開催された党大会までに、憲法改正を目指す4項目について、長時間の議論を経て細田本部長に一任することを決定し、議論に一段落を付けました。これで憲法改正の条文案が確定したわけではなく、下記の条文は飽くまで「条文イメージ(たたき台素案)」として示されたものであり、引き続き、憲法改正へ向けて両院の憲法審査会の場などにおいて党内外の議論が続けられることになります。
 そうした前提の下、条文素案の解説を試みますが、私は現在憲法改正推進本部の役員ではないので、下記の解説は、私的なものであって、自民党の見解ではないことをお断りしておきます。なお、憲法改正推進本部の公式解説は、こちらから御覧ください。

 【自衛隊の明記】
第9条 (現行どおり)
第9条の2 前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要
 な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、
 内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。
A 自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。

 憲法第9条の改正案の最大の議論は、現行憲法の同条第2項を残すかどうかということでした。同項は、戦力の不保持と交戦権の否認を定めた規定であり、平成24年の自民党憲法改正草案(以下単に「草案」といいます。)でも、実質的に削除されていました。
 それを残すと、自衛隊は「実力」であって「戦力」ではない、あるいは、交戦権の否認の下自衛権の行使はできるというようなある意味苦しい憲法解釈を続けていかなければならず、国民に分かりにくいという指摘も多く出されました。
 一方で、同項は、同条第1項とともに「自衛権の行使は、必要最小限度でなければならない。」という政府解釈の根拠となるものであり、それを削除すると自衛権の範囲が拡大するという懸念がありました。また、同条第2項を残すことにより、この政府解釈を変えないことを明らかにすることも、必要でした。様々な議論がありましたが、国民や他党の理解を得るためには、現行の自衛権に関する政府解釈をいささかも変えるべきではないという意見が大勢を占め、同項を残すこととしました。
 そして、第9条には一切手を付けずに、第9条の2を新設し、自衛隊の保持について規定することとしました。自衛隊違憲論に終止符を打つことは、極めて意義深いことです。原案には「必要最小限度の実力組織として」という趣旨の文言が入っていましたが、「必要最小限度」は、政府解釈としては理解できるが、憲法の条文に規定すると新たな解釈問題を引き起こしかねないという批判が多数あり、規定からは除外されてこのような規定となりました。なお、「前条の規定は、〜必要な自衛の措置をとることを妨げ」ないとしたときに、前条第2項の存置にもかかわらず、同項に係る政府解釈までもが否定されることにならないかという解釈上の懸念のあることは指摘しておきたいと思います。
 「内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする」と規定したのは、シビリアンコントロール(文民統制)を明確にするとともに、旧憲法の「統帥権の独立」などの反省から、自衛隊が行政権である内閣の所轄に属するものであることを明確にするものです。
 くわえて、多国籍軍による集団安全保障措置が講じられる場合の「後方支援」などが、この規定で読み得るかという議論もありますが、武力の行使を伴わない自衛隊の附帯業務は、法律によって定め得る事項だという考え方もあるのでしょう。

 【緊急事態対応】
第73条の2
 大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待つい
 とまがないと認める特別の事情があるときは、内閣は、法律で定めるところにより、国民の生
 命、身体及び財産を保護するため、政令を制定することができる。
A 内閣は、前項の政令を制定したときは、法律で定めるところにより、速やかに国会の承認を
 求めなければならない。

第64条の2 大地震その他の異常かつ大規模な災害により、衆議院議員の総選挙又は参議院
 議員の通常選挙の適正な実施が困難であると認めるときは、国会は、法律で定めるところによ
 り、各議院の出席議員の3分の2以上の多数で、その任期の特例を定めることができる。

 この緊急事態対応の規定は「大地震その他の異常かつ大規模な災害」を対象とすることとしていますが、私は、有事の「武力攻撃災害」や大規模テロ等の「緊急対処事態災害」も含み得るものと考えています。そうした大規模災害が生じたときは、「国民の生命、身体及び財産を保護するため」に法律に代わる政令(緊急政令)を制定できることとされました。
 緊急政令は、現行法制でも災害対策基本法、国民保護法及び新型インフルエンザ等対策特別措置法に例がありますが、国会の閉会中にしか制定できず、モラトリアム(債務猶予)などの規定は、スピードが重要なことから、国会の開会中でも制定できるようにすることの必要性が従来説かれていました。
 野党などが緊急政令について行政権に権限を集中させる危険極まりない規定であるなどと批判していますが、決して政府の任意で何でも規定できるわけではありません。「法律で定めるところにより」とあるように、何について緊急政令を定め得るのかは、その制定手続とともにあらかじめ法律に規定しておくのです。私は、そのことを強調するために「あらかじめ法律で定める事項に限り」などと規定してはどうかと提案したところです。
 草案に規定のあった予算がない場合の財政執行等、地方公共団体の長への指示や国民保護のための国民への指示の規定は、盛り込まれませんでした。
 大規模災害時の国会議員の任期の延長の規定は、緊急事態宣言の規定が置かれなかったことから、緊急事態対応の規定とは切り離し、国会議員に関する特例規定として国会の章の最後に規定することとされました。そして、各議院の3分の2以上の特別議決により法律で任期の特例を定めることができることとされました。
 時折緊急事態の仕組みとして参議院の緊急集会があるのではないかとの指摘を受けますが、大きな誤解です。大規模災害時において既に衆議院が解散されている場合に、参議院の緊急集会で対応することは、現行憲法と何の変わりもありません。東日本大震災の時に地方議員の任期を延長したのも、行政や住民生活が混乱する中で選挙を施行することが難しいという判断があったからです。

 【合区解消・地方公共団体】
第47条
 両議院の議員の選挙について、選挙区を設けるときは、人口を基本とし、行政区
 画、地域的な一体性、地勢等を総合的に勘案して、選挙区及び各選挙区において選挙すべき議
 員の数を定めるものとする。参議院議員の全部又は一部の選挙について、広域の地方公共団体
 のそれぞれの区域を選挙区とする場合には、改選ごとに各選挙区において少なくとも1人を選
 挙すべきものとすることができる。
A 前項に定めるもののほか、選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、
 法律でこれを定める。

第92条 地方公共団体は、基礎的な地方公共団体及びこれを包括する広域の地方公共団体と
 することを基本とし、その種類並びに組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づい
 て、法律でこれを定める。

 参議院選挙区の合区を解消し、都道府県選挙区を維持するために、都道府県から最低1人の参議院議員が選出されることが規定されました。合区された選挙区の有権者の皆さんの切実な訴えを受け止めたものです。合区解消に伴って一票の較差が拡大し、憲法第14条に定める法の下の平等に反すると指摘する人がいますが、憲法の規定同士に上下関係はなく、法制的な問題はありません。
 選挙区について、「人口を基本とし、行政区画、地域的な一体性、地勢等を総合的に勘案して」定めるものとしましたが、同様の規定が草案にもありました。一票の較差には、許容の範囲があることを示したものです。
 この規定を置く際に、憲法には「都道府県」の概念がないことから、地方自治の章において、「基礎的な地方公共団体」と「広域の地方公共団体」を置くことが定められました。都道府県は、広域の地方公共団体に当たります。このことは、草案にも規定されていたことであり、単に合区の解消の規定を設けるためだけでなく、二段階式の地方自治制度を保障するという独自の意義を有しています。この規定であれば、道州制にも対応可能ですし、「基本と」すると規定したことから直轄市のような一段階の地方公共団体を例外的に設けることも論理的には可能です。

 【教育充実】
第26条 (第1項及び第2項は、現行どおり)
B 国は、教育が国民一人一人の人格の完成を目指し、その幸福の追求に欠くことのできないも
 のであり、かつ、国の未来を切り拓く上で極めて重要な役割を担うものであることに鑑み、各
 個人の経済的理由にかかわらず教育を受ける機会を確保することを含め、教育環境の整備に努
 めなければならない。

第89条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持の
 ため、又は公の監督が及ばない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はそ
 の利用に供してはならない。

 教育充実の規定は、草案に既に同様な規定があり、それを土台として、維新の党の教育の無償化の要請にも配慮し、規定されたものです。
 党内の議論では、今の義務教育の無償以上の規定を憲法に置くのは難しいという意見が大勢を占め、むしろ経済的理由により教育を受ける権利を奪われないということを規定した方がいいのではないかという意見が多数でした。それを踏まえて調整した結果、このような規定になったものです。
 私学に対する助成の禁止の規定については、従来様々な議論がありました。建学の精神を尊重した規定とも言えますが、現在ほとんどの私立学校で国や地方公共団体から助成を受けており、「公の支配に属しない」という文言が助成を受けている私学に対して失礼な表現ではないかという意見があるところです。そこで、草案の規定どおり、「公の監督が及ばない」という文言にこの際改めることとしたものです。
 この規定においてそもそも「教育」を削除すべきではないかとの意見もありましたが、今なお学習指導要領等に準拠しないで授業を行っている外国人学校があり、規定を残すことになりました。

ページのトップへ

佐川前理財局長へ告げる(3月23日)

 あなたは、3月27日(火)、参議院衆議院両院に招致され、森友学園事件に関して証人として答弁を求められることになりました。
 あなたと私は直接の面識はありませんが、役所は違ってもほぼ同じ時期に霞が関に籍を置いていた者の一人として、お願いがあります。どうか、証言に当たっては、あなたの知っていることを洗いざらい明らかにしてください。

 同僚の国会議員が今一番心配していることは、あなたが刑事訴追を受ける可能性があることを盾にして何も語らず、国会の混乱に一層拍車を掛けることです。極東情勢は混迷を深めており、こうした一公有地の売却問題に多くの時間を掛けている余裕は、我が国にはありません。どうか本当のことを語っていただき、一刻も早く決着を付けようではありませんか。

 公文書の書き換えは許すことのできないことですが、それはあなたも十分承知のことだったはずです。しかし、刑事処分の話は、また違う話です。どうかそのことを盾としないでください。

 あなたが正直に発言した結果、本当に大変なことが起きるのであれば、私たちも覚悟しておかなければなりません。忖度(そんたく)云々の話は別にして、私は、森友学園事件に政治的介入はなかったと信じています。しかし、万一それが真実でなかったのならば、例えそれが安倍政権へ影響を与えるものであったとしても、私は覚悟を決めます。どうか本当のことを語ってください。

 公文書の書き換えは、賢明な太田理財局長が答弁しているように、あなたの答弁との整合性を保つために行われたのは事実でしょう。また、太田局長は、そのことについてあなたも知っていたとも答弁していますから、あなたの指示で書き換えが行われた考えるのが、役所の常識です。理財局以外の財務省のお役人が介在していたかは分かりませんが、私は、政治家が公文書の書き換えを指示するなどということは、あり得ないと思います。どこにどんな文書があるのか、政治家には知る由もないからです。

 もし何かがあったとしたならば、あなたが国会で答弁をした前後であったのではないかと、推察します。虚偽の答弁をしてしまったから、公文書の書き換えを行った。それは役所の判断で行ったことであり、私は、むしろその前にあなたがなぜ「政治家からの問合せは全くなかった」「籠池氏側との事前交渉はなかった」「関係文書は全て廃棄してしまった」とうその答弁をしてしまったのか、そこに鍵があると思います。どうかその理由を正直に教えてください。

 丁度去年の今頃だったでしょうか、森友学園問題について財務省理財局と国土交通省航空局の課長クラスのお役人を招き、説明を聞きました。その説明は、今国民の皆さんが知っていることとほぼ同じでした。お役人から「後からごみが出て来たので、その処分に要する額を算定して売却額から差し引いたこと」「今後更にごみが出て来ても瑕疵担保責任を負わない旨の契約を結んでいること」の説明がありました。私は、後に会計検査院からも指摘されることになるのですが、「ごみの量の算定の方法が少しアバウトじゃないか。」と指摘しました。

 もちろん、あなたも知っているとおり、処分費の算定がアバウトであるから直ちに公有地の売却が不正であったことになるわけではありません。ピッチャーが緩いへなちょこ球を投げたとしても、それがストライクゾーンを通過すればやはりストライクなのです。土地の売却交渉に当たっては、ストライクゾーン、すなわち裁量の幅はある程度広いのであって、そこにとどまっている限り売却が不正であったとは言えません。

 お役人の帰り際に「君の所(理財局)の局長は、答弁がちょっと勇ましすぎるのではないか。少し抑えた答弁にしておかないと、後々困るよ。そう局長に伝えておいてください。」と、話をしました。あなたの所には、多分そのことが伝わらなかったのかもしれませんね。今不運にも予想が当たってしまい、その時私からあなたに直接伝えれば良かったと悔いています。

 あなたには、いろいろな懸念があるのだろうと思います。人生にはいい時悪い時みんなにあります。しかし、これまで官僚として国家を支え、国家を動かしてきたあなたにとって、その真を完遂する途は、正直に全ての事実を明らかにすること以外にありません。あなたの証言を待っています。

ページのトップへ

公文書の書き換え問題について(3月14日)

 財務省に保管されていた森友学園への公有地の売却に係る決裁文書が書き換えられていたことが判明しました。言語道断のことであり、弁解の余地は全くありません。
 かつて霞が関に籍を置いていた私にとっても、過去の決裁文書に手を加えるなどということは考えられないことであります。現在政府にいる身ではありますが、事態の重大性に鑑み、有権者の皆さんに自ら説明する必要があると考え、筆を執りました。

 この問題には、二つの局面があります。一つは、今指摘した公文書の書き換え問題です。もう一つは、公有地が適正に売却されたのかという問題です。この二つの問題は、分けて考えることが必要です。

 まず、公文書の書き換え問題については、今述べたように全く許されるものではなく、その責任者や実行者は、責任の程度に応じて断罪されるべきものです。しかも、それが国会提出文書であれば、国民の代表である国会の軽視であり、野党の指摘するように「民主主義への冒とく」であって、責任は更に重いと言わざるを得ません。事件の全容が解明された段階で、厳しい処分が行われるべきであります。
 その責任者は当時の佐川理財局長であったと麻生財務大臣が会見で述べており、私は、それを信じたいと思います。その上で、公文書の書き換えに直接関与していない管理監督の立場にあった人たちの責任の在り方については、今後、それぞれ自ら判断するとともに、国会でも議論されることになると考えています。

 もう一つの公有地が適正に売却されたのかという問題については、二つの観点があります。第一に、公有地の売却に関し政治家等から不当な働き掛けがあったのかということです。第二に、公有地売却そのものが適正に行われたのかということです。

 第一の点については、公文書の書き換えによってこの件について働き掛けをしていた複数の政治家等の氏名等が削除されていたのは事実です。しかし、それらの者から財務省に対して不当な働き掛けがあったかどうかは現在のところ不明であり、それがあったという証拠はありません。
 政治家として、関係者を役所に紹介することは、時折あることです。こうしたことは、政治家として許されないものではありません。不当なことを要求しない限り、それは不当な働き掛けではありません。
 公文書から政治家等の氏名等が削除されているのは役所側の忖度(そんたく)と指摘されるかもしれませんが、一方で、政治家等による不当ではない働き掛けまでが追及されるべきではないでしょう。

 第二の点、すなわち公有地売却そのものが適正に行われたのかという点が、実は一番重要な観点なのですが、衆参の予算委員会における与野党の質疑において必ずしも十分に詰め切ってはいない感じがします。忖度云々と言っても、仮に公有地の売却が適正に行われていたのであれば、それを議論する余地はほとんどないのです。
 森友学園用地は、大量の廃棄物が不法投棄された元沼沢地であり、そうした瑕疵(かし)ある物件の売却価格が更地価格を下回ることはよくあることです。私の地方勤務の経験でも、支障物の処理費の方が更地価格を大きく上回ったこともありました。したがって、更地価格より安く売ったことが、直ちに問題であるわけではありません。
 これまでの報道から、後になって更に大量のごみが発見され、籠池氏側から近畿財務局が強く迫られていたのも、事実でしょう。そうした中で、財務省がどういう判断をしたのかが焦点なのです。このことについて、財務省は、今後仮に新たな瑕疵(ごみ)が発見されても国は瑕疵担保責任を負わないことを条件に、売却額の大幅な減額を行ったと国会で説明しています。

 ここで疑問なのは、売却に不正がないのであればなぜ公文書の書き換えまでしなければならなかったのかということです。おそらく籠池氏側とは事前交渉をしていないとか、政治家の働き掛けはなかったとかいう答弁を国会でしてしまったからということだと推定しますが、全くお粗末な話です。最初からもっと真摯に事実に基づいた答弁をしていれば良かったのです。
 一方で、昨年会計検査院がこの事件について参議院議長に対して検査報告をしており、関係書類が既に処分され、断定はできないとしつつも、売却価格は適切ではなかったという趣旨のことを報告しています。こうした点が事実であるのかどうかが、重要な点であります。
 既に告発を受けて背任罪等により大阪地方検察庁が捜査に入っており、予断を持って議論をするのは難しい局面に入っていますが、まず公有地の売却が適正であったかどうかが事実として確定されなければなりません。仮に忖度云々の議論をするにしても、そのことが前提として分かっている必要があります。

 大きな事件になってきました。全ての関係者が事実に基づいて正直に発言し、その全容が徹底的に解明されることを望みます。

ページのトップへ

日本の勲章制度(1月11日)

 原則として春秋の2回叙勲が行われており、お問合せも多いので、簡単に日本の勲章制度について解説します。

 勲章には、菊花賞、桐花章、旭日章、瑞宝章、宝冠章及び文化勲章があります。瑞宝章は、かつてと異なり旭日章と同格とされ、勲章の種類の違いとされています。宝冠章は、従来女性に授与されていましたが、現在では、女性皇族や外国人女性に限って授与されることとされており、一般人が授与されることはなくなりました。文化勲章は、文化的功績の顕著な人に授与されるものであり、旭日大綬章等と同格に扱われています。文化勲章には文化功労者として年金が付与されるのが特徴です。

 最高勲章である菊花賞は、大勲位菊花章頸飾及び大勲位菊花大綬章の2等に分けられています。大勲位菊花章頸飾は、その名のとおり首飾りになっており、今上天皇が佩用(はいよう)されるほか、戦後は吉田茂、佐藤栄作両元内閣総理大臣が没後に授与されているだけです。大勲位菊花大綬章は、戦後、皇族のほか、歴代の内閣総理大臣の多くが没後に授与されていますが、生前に授与されたのは頸飾の受章者のほか中曽根康弘元内閣総理大臣だけです。菊花賞にのみ「大勲位」という勲等が残されています。

 桐花章は、桐花大綬章の1等だけです。かつては勲一等旭日桐花大綬章でしたが、勲等は廃止され、旭日章から独立しました。三権の長である内閣総理大臣や衆参両院議長などが生前又は没後に授与されています。

 旭日章は、旭日大綬章、旭日重光章、旭日中綬章、旭日小綬章、旭日双光章及び旭日単光章の6等に分けられています。従来の勲一等から勲六等までに対応していますが、勲等は廃止されました。また、かつてあった勲七等青色桐葉章及び勲八等白色桐葉章は、廃止されました。
 旭日章は、社会の様々な分野における功績の内容に着目し、顕著な功績を挙げた者に授与するものとされています。具体的な基準については、内閣総理大臣、衆参両院議長又は最高裁判所長官は大綬章、国務大臣、副大臣、衆参両院副議長又は最高裁判所判事は大綬章又は重光章、大臣政務官、衆参両院常任委員長等又は国会議員は重光章又は中綬章、都道府県知事又は指定都市の市長は重光章又は中綬章、市長又は特別区長は中綬章、小綬章又は双光章、町村長は小綬章、双光章又は単光章、都道府県議会議員、市議会議員等は中綬章、小綬章、双光章又は単光章、町村議会議員は双光章又は単光章などとされています。これに準じて、各種団体の役員や企業経営者などの基準も設けられています。
 このほか、 国際社会の安定及び発展、適正な納税の実現、学校教育又は社会教育の振興、文化又はスポーツの振興、科学技術の振興、社会福祉の向上及び増進、 国民の健康又は公衆衛生の向上及び増進、労働者の働く環境の整備などに寄与した者、環境の保全、農業、林業、水産業、商業、鉱業、工業、情報通信業、建設業、不動産業、金融・保険業、サービス業等の業務、弁護士、公認会計士、弁理士等の業務、新聞、放送その他報道の業務、電気事業、ガス事業、運輸事業等の公益的事業などに従事した者、公衆の福祉の増進に寄与した者のほか公益に寄与した者に授与されることとされています。
 
 瑞宝章は、瑞宝大綬章、瑞宝重光章、瑞宝中綬章、瑞宝小綬章、瑞宝双光章及び瑞宝単光章の6等に分けられています。従来の勲一等から勲六等までに対応していますが、勲等は廃止されました。従来は「勲○等瑞宝章」と呼んでいましたが、勲等の廃止に伴って旭日章と同様の名称が付けられました。また、かつてあった勲七等瑞宝章及び勲八等瑞宝章は、廃止されました。
 瑞宝章は、国及び地方公共団体の公務又は公共的な業務に長年にわたり従事して功労を積み重ね、成績を挙げた者に授与するものとされています。具体的な基準については、各府省の事務次官は重光章、局長は中綬章、課長は小綬章などとされ、その他は、これに準じて定められるものとされています。
 このほか、学校において教育又は研究に直接携わる業務、各種施設において社会福祉に直接携わる業務、医療又は保健指導に直接携わる業務、調停委員、保護司、民生委員など国又は地方公共団体から委嘱される業務、著しく危険性の高い業務、精神的又は肉体的に著しく労苦の多い環境における業務のほか人目に付きにくい分野における業務に長年従事した者に授与されることとされています。
 特に警察官、自衛官、消防吏員、刑務官、海上保安官などには、危険業務従事者叙勲として、一般の受章者枠とは別に、瑞宝双光章又は瑞宝単光章が授与されています。

 宝冠章は、宝冠大綬章、宝冠牡丹章、宝冠白蝶章、宝冠藤花章、宝冠杏葉章及び宝冠波光章の6等に分けられています。従来の勲一等から勲六等までに対応していますが、勲等は廃止されました。従来は「勲○等宝冠章」と呼んでいましたが、勲等の廃止に伴って大綬章以外は花名等が付けられました。また、かつてあった勲七等宝冠章及び勲八等宝冠章は、廃止されました。先に述べたように、一般人が授与されることはなくなりました。

 文化勲章は、科学技術や芸術などの文化の発展や向上にめざましい功績のある者に授与されます。文化勲章に等級はありません。

 叙勲の章状のことを「勲記」と呼びます。勲記には、「日本国天皇は○○○○に○○○○を授与する 皇居において(みずから名を署し)璽をおさせる」と記され、勲記の中央に御名が署され、国璽が押印されています。ただし、御名が署されるのは、大綬章以上の勲章及び文化勲章に限られます。「国璽」とは、約9センチメートル四方の「大日本国璽」と記された印章であり、重光章相当以上の勲記では印刷ではなく実際に押印されています。「御璽」は、「天皇御璽」と記された印章であり、これとは異なります。さらに、内閣総理大臣及び内閣府賞勲局長が副署します。

 大綬章以上の勲章及び文化勲章は、宮中で親授式が行われ、天皇陛下自ら授与されます。重光章及び宝冠牡丹章は、宮中で伝達式が行われ、天皇陛下御臨席の下内閣総理大臣から伝達されます。中綬章以下の勲章は、所管大臣から伝達され、皇居で拝謁を賜ります。一部は、都道府県知事から伝達されます。

 ちなみに、栄典には、勲章のほか褒賞があり、紅綬褒章、緑綬褒章、黄綬褒章、紫綬褒章、藍綬褒章及び紺綬褒章の6種類があります。紅綬褒章は人命救助をした者に、緑綬褒章は社会奉仕活動をした者に、黄綬褒章は業務に精励した者に、紫綬褒章は学術芸術上の発明改良創作に関し事績著明な者に、藍綬褒章は公衆の利益を興し成績著明な者に、紺綬褒章は公益のため私財を寄附した者に授与されます。

ページのトップへ