最低賃金を考える
(3月26日)

 政府の経済政策アベノミクスは大きな木に育っており、有効求人倍率を始め各種の経済指標が好転してきました。しかし、まだまだ国民の多くが「景気回復」を実感していないのも、事実でしょう。アベノミクスの果実を分配するためには、賃金の上昇が必要であり、個々の人の可処分所得を増大させることが不可欠です。地元を回ると、「仕事は増えているが、人手不足で大変だ。」という声をよく聞きます。デフレ経済を脱して、景気が拡大方向にあることは、間違いありません。そうした中、地方の中小企業においては、十分な賃上げをするだけの体力がまだまだない状況にあります。

 地方における人手不足の原因の一つに、最低賃金の地域間較差を指摘する意見があります。最低賃金は、正規労働者かパート労働者かであるかにかかわらず、原則全ての労働者に適用される基準であり、違反には罰則があります。最低賃金は都道府県ごとに地方の審議会の決定に基づいて定められており、それには時間当たり200円を超える地域間格差があり、平成30年度で最高は東京都の985円、最低は鹿児島県の761円となっています。大分県は、賃金の高い順にA、B、C及びDの4ランクに分けられた一番下のDランクに属し、鹿児島県と1円違いの762円であって、同額の県は11県あります。

 このように最低賃金が地域によって異なると、特に外国人労働者などでは最低賃金の高い地域に流出するのではないかという意見があります。そこで、最低賃金を全国で一元化し、地域による賃金格差をなくすべきであるという主張がなされています。最低賃金は労働者の最低の生活を保障する人権保障としての機能を有しているという説が法曹界では有力となっており、そうであれば最低賃金が地域で異なっているのはおかしいとも指摘されています。しかし、政府は、現実の地域ごとの賃金格差が大きい現状では、最低賃金を全国で一元化するのは難しいと、慎重な態度を採っています。

 政府の考えも理解できますが、各都道府県の最低賃金は、国の審議会が示すA、B、C及びDのランクごとの目安額、すなわち引上げの参考額に基づいて地方の審議会が定めており、それが賃金格差を拡大させているという指摘もあります。例えば平成30年度において目安額はAは27円、Bは26円、Cは25円、そしてDは23円と最低賃金が高いほど高くなっており、地方の審議会が定める最低賃金の格差は年々拡大しています。最低賃金を全国で一元化するのは直ちには困難であるとしても、格差は縮小する方向に持っていかなければおかしいのではないでしょうか。

 そうした中で、最低賃金の引上げの話をすると、中小企業の経営者の皆さんは余りいい顔をしません。それだけの余裕がないのです。地方における最低賃金を引き上げていくには、中小企業に対する支援策なしには実際難しいでしょう。何ができるか、考えてみたいと思います。法人税の減免ということがすぐ浮かびますが、中小企業はそのほとんどが赤字法人であり、この方法はほとんど効き目がありません。

 まず、雇用調整交付金などを活用し、一定規模以下の小規模な企業であって直接最低賃金の引上げによる賃金上昇の影響を受けるものに対しては、直接的な賃金助成をすることが考えられます。ただし、このような助成は、財政的見地からは、相当絞ったものにする必要があります。もう一つは、社会保険料の企業負担の減免が考えられます。年金や健康保険等の社会保険料については、本人と企業が原則折半で負担しており、企業負担が大きく、企業の負担感が根強くあります。賃金を引き上げれば社会保険料も増大するので、その部分の一定割合を国が助成することが考えられます。これは、有効な手段ですが、財政負担も大きなものになります。

 厚生労働省が生産性向上を図った企業に対して業務改善助成金を交付しており、一定の効果が出ています。しかし、主として製造業のような業種を念頭に置いて設計されたものであり、最低賃金に近い賃金を受けている労働者は特にサービス業に多いことから、そうした労働生産性を上げにくい業種に対しても助成ができるよう、予算額を拡大してより要件の緩和を図っていく必要があります。さらに、店舗や工場の不動産賃貸料に対する施策も考えていく必要があるでしょう。 

 こうした施策を通じ、きめ細かく中小企業を支援しつつ、最低賃金の向上、賃金の引上げを図っていくのであれば、中小企業の皆さんの理解を頂けるのではないかと考えます。政府では、平成29年3月に策定した「働き方改革実行計画」で最低賃金の全国加重平均を1,000円とするという中期的目標を掲げ、毎年3パーセント程度の最低賃金の引上げを後押ししています。それを実現しつつ、地域間格差が拡大しないようにしていくことが極めて重要であり、そのための具体的な中小企業対策の構築が必要です。

糖質制限ダイエットの勧め3
(1月9日)

 農林水産副大臣在任中は立場上遠慮していましたが、昨年退任したことから正月ネタとして第3回をしたためてみました。なお、「糖質制限ダイエット」は、飽くまで「制限」であって、私自身も、朝食昼食ではしっかりと御飯やパンを食べていますので、御理解頂きたいと思います。

 糖質制限ダイエットは、糖質のある食べ物の摂取を制限することにありますから、油類を制限する必要はないというのが最大の特色です。それがカロリー制限ダイエットとの大きな違いです。よく聞かれるのが「お酒はやっぱり太りますよね。」ということですが、「お酒だけでは絶対に太りません。」とお答えしています。

 御飯1杯の糖質は、あるメーカーの計算では、55.2グラムです。一方、日本酒1合の糖質は8.1グラムしかないので、ざっと計算して、御飯1杯食べるのと日本酒7合飲むのがほぼ同じということになります。日本酒を毎晩7合飲む人はそんなにいないでしょうから、「お酒だけでは太らない。」と申し上げているのです。もちろんこのことは、ダイエットの話であり、肝臓への負荷は、また、全く別の話です。言うまでもなく酒のつまみも別の話であり、粉を付けて揚げた鶏の唐揚げを大量につまみにしたのでは、ダイエットはできません。

 ビールも、350ミリリットル1缶の糖質は、10.9グラムであり、大したことはありません。ただし、ビールの飲み過ぎは、尿酸値を増やし、痛風の原因となります。白ワインは、100ミリリットルでわずか2.0グラムです。赤ワインも同程度であり、ポリフェノールの摂取にいいと言われています。ワインには、糖質制限上も分があります。さらに、蒸留酒である焼酎やウィスキーには、全く糖質はなく、幾ら飲んでもそれだけで太ることはありません。ただし、繰り返しになりますが、肝臓への影響は異なる話です。

 では、つまみには何がいいのでしょうか。乳製品にはほとんど糖質がありませんので、ワインにチーズというのが最高の組合せです。国産ワインのレベルが相当に上がってきましたから、それを国産のカマンベールチーズで頂くというのがいいのではないでしょうか。副大臣在任中も、もっと国産の安いチーズの生産を拡大すべきだと言ってきました。それに飽きたら、ナッツ類(木の実)には糖質はないので、ピーナッツやアーモンドなどがいいつまみになります。飛行機に搭乗してお酒を注文すると、まずおかきのつまみが出されるのですが、いつも「ナッツに変えてください。」とお願いしています。

 もう少ししっかりとしたつまみがほしい人には、糖質制限ダイエットの観点からは、牛肉のステーキを食べても、太ることはありません。もちろん、食べ過ぎには注意してください。過ぎた量を摂取すると、一般論が通用しなくなります。豆腐や納豆、枝豆には糖質はありませんが、そのほかの豆類には糖質があります。

 ちなみに、飲食後の締めの御飯やラーメンが欲しくなるのは、おいしいからではありません。アルコールと食事を一緒に摂ると、肝臓はアルコールの分解を優先するので、糖の分解に手が回らず、逆に血糖値が下がり、お腹が空いてくるのです。しかし、いずれ一緒に食べた食事の糖質も分解されてきますから、締めの御飯やラーメンは過剰な糖質を供給し、肥満や高血糖の大きな原因となります。宴会の締めの料理は、控えたいものです。

 最近、「グルテンフリー」ということが言われ始めています。小麦から生成されるグルテンにアレルギーを持つ人がいて、その対策として行われ始めたことですが、グルテンはアレルギーを持つ人以外にも様々な支障を及ぼすと言われています。糖質制限ダイエットの観点からも、小麦は糖質食物ですからできるだけ控えた方がいいのですが、小麦を使った料理は日本人の大好きなものが多く、なかなか大きく制限するのは難しいのです。

 例えばパン以外にも、スパゲッティなどのパスタ、うどん、ラーメン 餃子、中華饅頭などの皮、お好み焼き、たこ焼き、ピザ、揚げ物、カレーやシチューのルー、ケーキのスポンジ、麦焼酎やビール、発泡酒、十割でないそばなど様々なものに小麦粉が使われています。まだアレルギーを持つ人以外への影響は医学的に完全に解明されていないので、今「グルテンフリー」を実行すべきであるとは言いがたいのですが、糖質制限ダイエットの観点からは、小麦の摂取量を制限することは必要なことです。

 復習になりますが、糖質制限ダイエットとは、糖質の多い御飯、パン、麺、芋、カボチャ、果実などの摂取を制限することです。糖質換算で1日130グラム以下程度に押さえるといいと言われています。飽くまで「制限」であって、摂取しないことではありません。制限であれば、おかずをたくさん採ってもいいので、お腹が空くことはありません。しかし、糖質制限ダイエットは、比較的早く成果が出ますが、そのうち必ず壁に突き当たります。糖質制限ダイエットには、限界があるのです。そのときは、カロリー制限ダイエットに移行しなければなりませんが、おかずなども制限しなければならず、結構苦しいことです。

 糖質制限ダイエットだけでも、健康的なレベルには、それなりに達すると思います。私は、国会議員としての最大体重は83キログラム超でしたが、糖質制限のおかげで、今は74キログラム程度になっています。でも、どうしても、73キログラム台にはなりません。どうやらこの辺りが壁のようです。学生時代は柔道やラグビーをしていたので、卒業時の体重は72キログラムでした。何とかそこまで下げたいのですが、あと少しのところが何とも難しいのです。一方、人間ドックの数値は、一部のものを除き、ほとんど改善されてきました。当面、カロリー制限ダイエットには入らず、糖質制限ダイエットを続けていきたいと思います。

新旧対照表方式をめぐって
(12月26日)

 霞が関ネタで恐縮ですが、省令の改正方法をめぐる最近の動きについて、説明したいと思います。法令を改正するときは、「第○条第○項中「A」を「B」に改め、「C」を削り、「D」の下に「E」を加える。」などと規定します。これは、「改め文」と呼ばれ、それを用いた改正方法を「改め文方式」と呼びます。「あらためぶん」と読むのですが、役人は「かいめぶん」と読んでいます。これにかみついたのが元行革大臣の河野太郎外務大臣です。「改め文は、新旧対照表を作成したうえで、誰も読まない改め文を改めて作成し、しかも、それを作る「技術」を役所内で伝承するというわけのわからないことになっています。」と批判し、新旧対照表方式を採用するよう指示を出しました。とは言っても、国会との協議が必要な法律案や、法制執務の牙城である内閣法制局との調整が必要な政令案については、一気にはいかないので、各府省の権限で変更可能な府省令案について、まず「新旧対照表方式」に変更するよう指示したのです。

 もちろん、各府省に強制することはできないので、任意の協力を得ながら自民党の行革本部とも連携をとって進めてきました。その結果、河野大臣の威光はもとより、各府省でも真剣な検討が続けられ、多くの府省で多くの府省令改正について、新旧対照表方式が普及してきました。私も、このことに異論はありませんが、幾つかの課題があると考えるので、それを整理したいと思います。

 新旧対照表方式とは、法令を改正するに当たって、上下の2段に分けて上に改正案を下に現行法令を記し、改正部分に傍線を引いた新旧対照表を用いて、簡単に言えば、新旧対照表の前に改め文を置き、「次の表のように改める。」と規定する方式を言います(実際の改め文は、かなり複雑な表現になります。)。新旧対照表は、従来の改め文方式による改正の場合においても、参考資料として必ず作成するものであるので、働き方改革を考える上でも、二度手間になっているという批判があります。そうした中、現在、全ての府省で新旧対照表方式が採用されていますが、必ずしも全ての府省令に適用してはいないようです。

 府省令の改正には、現在、4つの方法が行われています。
@ 一つは、従来の改め文方式による改正です。新旧対照表が膨大なものとなるときなど、なお用いられています。
A そして、今説明した新旧対照表方式ですが、これには、二重傍線などを用いて従来の新旧対照表とは異なる特殊な新旧対照表を用いる方式があります。この方式は、内閣法制局が非公式に協力して作成した方式とも言われており、ほぼ半数の府省においてこの方式が採られているようです。
B もう一つの新旧対照表方式は、私が農林水産副大臣の時に同省で検討したものもその一つですが、従来の新旧対照表とは異なる特殊な新旧対照表を作成することにすると職員の中に混乱が生ずる可能性があるので、あえてそうはせずに、多少法制執務の原則から外れるところはありますが、できるだけ通常の新旧対照表を用いて改正する方式です。同趣旨の方式がやはり約半数の府省で採用されています。
C さらに、厚生労働省では、新旧対照表の前の改め文を規定せずに、改正文で「〇〇施行規則の一部を次の表のように改正する。」と規定するという大胆な方式が採用されています。改正文と改め文の関係はここでは述べませんが、法制執務の原則との関係でやややり過ぎの感じがします。

 このように複数の方式が各府省で採られており、私は、ルールの一元化が必要であると考えます。私が関わったBの方式でも、新旧対照表の前の改め文では規定し尽くせない場合があり、その場合の細かなルールは、各府省でまちまちになっているはずです。中央省庁の法制執務は、地方の手本になるものでなければならず、霞が関ルールを確立すべきであると考えます。いずれ、内閣法制局がリーダーシップを発揮すべきでしょう。

 新旧対照表方式の最大のデメリットは、法令本体が改め文方式に比較して膨大なものなるということです。府省令も、官報を用いて公布されますが、経費等の観点からも、官報のページ数の増加は無視できません。どういうことかというと、かつて自治省は合併して総務省となりましたが、その時地方自治法上の語句を修正するのであれば、改め文は、「地方自治法中「自治省」を「総務省」に、「自治大臣」を「総務大臣」に改める。」と規定すれば終わりなのです。それが、新旧対照表方式では、当該改正がある現行規定を条単位で新旧ともに全て掲載しなければならないので、関係のない項は「(略)」を用いつつも、膨大なものになります。

 膨大になれば、誤りを誘発しやすいことも指摘されています。そのため、新旧対照方法式では、現在、改正に関係のない部分の記載は法的効力を有しないものとし、仮にミスがあっても法令全体の効力に影響を与えないものとして処理しています。官報の問題は、法制の問題と離れて結構難しい問題ですが、官報は既に電子版(pdf)が公開されており、今後官報の完全電子化等が議論されるのだろうと考えています。ただし、その場合は、法令の横書き化の検討も必要かもしれません。

 新旧対照表方式は、府省令から先行しましたが、では、法律や政令はどうするのかという課題があります。内閣法制局が簡単に態度を変えるとも考えられません。想定されるのは、法律改正で新旧対照表方式が導入される可能性があるということです。国会改革というのはなかなか時間が掛かるものですが、こうした事務改善については、急転直下与野党合意に至ることも考えられます。仮にそうなれば、内閣法制局も、法律と府省令に挟まれ、政令だけ改め文方式に固執することもできなくなるでしょう。私自身も、長年法制執務に携わっており、改め文方式の一部改正方式がなくなるのはさみしいことですが、時代の流れには逆らえません。

※新旧対照表方式の一部改正方式については、拙著「分かりやすい法律・条例の書き方」第4章用字用語・配字・新旧対照表を参照してください。


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